人生再起の記録

30代後半で仕事・お金・友達・人脈を失ったところからの再起の記録

30代後半で昔の恩を別の人に返す

30代後半で仕事を失い、お金がなく、人脈もなく、友達もいない。

こんな僕だけど、30代後半になるこれまでに、多くの場面で多くの人から恩を受けてきた。

だけど、恩を受けた感謝こそすれど、その恩を直接ご本人たちに返すことはもちろん、別の形で返すということさえもしてこなかった。

そんな中、思わぬ形で恩を別の人に返すことになった。

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今の僕にはお金がなく貯金もあとわずか。
学生時代以来の大貧民となっている。

まさか30代後半でこんなことになるとは社会人になりたての頃は想像だにしなかったけれど、これが現実なので受け止めつつ、仕事を探しをしている。

生活費を切り詰めるため、週に2回ほど歩いて30分ほどの所にある激安スーパーに買い出しに行っている。

このスーパーは、本当に安く、しかも大きな野菜や大量の肉が安く手に入るので、このスーパーで1000円分買って調理を工夫すれば一週間の食事になる。

 

僕は、1000円程度の食料を購入し、家に向かった。

最寄りの駅前にある幹線通りを横切り、自宅へ続く道へ入ろうとしたところで、後ろから声を掛けられた。

「すみません」

振り返ると、見たところ50代くらいの男性が立っていた。

男性は言う。

「私は◯◯に住んでいて、こちらに用事があって来ていたのですが、
定期を忘れてしまって、帰れないんです。必ずお返ししますから、家までの交通費を1000円貸していただけませんか?」

 

僕は、突然の見知らぬ人からの依頼に一瞬戸惑った。駅前には交番もある。交番の場所を教えて警察に言って貸してもらうように伝えるべきではないか。

そして、何より今の僕にはお金がなく、たった1000円と言っても、今の僕には大金である。なにせ1週間分の食費だ。

だけど、僕は財布から1000円札を取り出し、「それは大変でしたね」と言いながら男性に渡した。

男性は、「ありがとう」と言いながら、1000円を受け取り、

「後日お返ししますので、ご自宅の住所を教えていただけますか?」

僕は、1000円は返す必要がないと言い、男性を見送った。

男性は、「ありがとうございました。助かりました」と言って、駅へ向かっていった。

僕は、男性を見届けた後、再び自宅へ向けて歩き出した。

 

僕は、男性から自宅まで帰るために1000円貸して欲しいと頼まれた時、ある出来事を思い出した。

 

それは、僕が高校1年生の時だった。

部活の試合で、神戸から大阪の競技場に来ていた。
行きは、学校経由で来たので、顧問の先生の車に乗せてきてもらった。

帰りは、僕に代わって別の仲間が先生の車に乗って帰り、僕は、一人その競技場のある最寄駅から電車で帰ることになった。

高校1年生でまだ試合には出れなかったけれど、格好は上下ジャージ姿。

しかし、最寄駅まで行って、自分が財布を持ってきていないことに気が付く。

その時、かなり焦ったことをよく覚えている。

高校生と言えども、大阪の馴染みのない街で一人。

当時は、携帯電話などもない時代だったので、家族などに連絡することもできない。

 

困った僕は、駅前にいる地元らしき50代くらいのおばさんに声を掛け、事情を話して家までの(正確には、定期券は持っていたので、学校までの)交通費1000円を貸して欲しいと頼んだ。

僕にとって、見知らぬ街行く人に声を掛けお願いをするのは人生初の出来事だったので、とても緊張した。

そのおばさんは、僕の話を一通り聞くと、

「それは大変やったなー。ほな1000円あげるから、気を付けて帰りやー」

と1000円を渡してくれた。

僕は、「ありがとう。助かります」と言いながらその1000円を受け取った。

 

だけど、僕はなんと1000円を受け取ったあと、金を返すためにおばさんの連絡先を聞かずに、その1000円を受け取り、自宅まで帰ってしまった。

僕は焦っていたことと初めて見知らぬ人に頼み事をした緊張からか、大事なことを聞かずに帰ってしまったのだ。
電車に乗ってから気が付いた。

僕は、おばさんから借りた1000円で無事に自宅に帰ることができた。だけど、おばさんに1000円を返すために連絡を聞かなかったこと、そしておばさんに1000円を返せないことを帰った後もずっと気にしていた。

しばらく気にしていたけれど、そのうち日々の学校生活や厳しい部活の練習などで、徐々に気にしなくなっていった。

 

あれから20年くらいが経った今、同じシチュエーションに遭遇することになった。今度は、僕が自宅までのお金を貸して欲しい頼まれる立場。

僕は、お金を貸して欲しいと頼んできたおじさんに1000円を渡してあげたことで、高校1年生の時の僕に1000円を貸してくれたおばさんの恩を返したことにした。

 

本当は、恩は本人に返すべきだろう。
だけど、恩を返そうと思っても返せない人もいる。
今回のおばさんの恩も本人に返せなかった。

だが、自分が受けた恩を他の人に返すという方法でよしとすれば、恩を返す機会はずっと増える

僕は、まだまだ返していない恩がたくさんある。
本人に返せるものは本人に、返せないものは他の誰かに返していこうと思う。

 

ちなみに、恩を別の人に返すというテーマの映画がある。 

ペイ・フォワード [DVD]

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 この映画では、今回の僕のように返せない人の恩を別の人に返すのではなく、最初から本人には返さずに他の誰かに返すというもの

これは「もし、自分の手で世界を変えたいと思ったら何をする?」という学校での課題に主人公が考えだした答え。

この映画は、作品としてもおすすめ。
シックスセンス」「A.I」で主人公を演じたハーレイ・ジョエル・オスメントが主演。まだ彼がかわいい時代の映画だ。