長時間労働は長時間勤務を評価する限りなくならない
「残業は平均60時間から70時間くらいです」
とある企業の採用面接で僕が質問した時の回答です。
この会社では早くても22時くらいまで会社にいるようです。
恒常的な長時間労働の匂いを感じます。
日本の長時間労働については、何かとニュースになりますね。
その背景は、諸外国に比べると日本の労働時間が長くて、その割に生産性が圧倒的に低いことが、長時間労働への関心が強くなっていること。
日本の労働者1人が1時間に生み出す価値を示す労働生産性は、40ドル。60ドルくらいのアメリカ、ドイツ、フランスに比べると3割くらい低い。
また、長時間労働が及ぼす健康への悪影響についても、長時間労働への関心を強めている背景にあるのでしょう。うつ病患者の増加などがその一例です。
このような長時間労働への関心から、これまで労働時間の管理がルーズだった企業もオフィスの退社時間を21時、20時とルールを定めたりし始めています。
だけど、退社時間を設定しても労働時間が短くなることはありません。
確かに退社時間は21時や20時になったかもしれませんが、社員は、これまでよりも1時間ほど朝早く出社したり、土日に出社しています。
これらの勤務履歴はどこにも残らないサービス残業と同じ性質の労働時間です。
なぜ長時間労働はなくならないのか?
一番の原因は、長時間働くことが「頑張っている」と評価され、人事評価に反映されるからだと思います。
2年ほど前に内閣府が実施した調査でも「長時間労働をした部下を評価する」と答える管理職が多いことが、当時ニュースで話題になっていました。
評価する際、成果を見るのはもちろんですが、そこに「頑張り」も加えているケースは多いと思います。
僕が以前の会社では、僕は部下を人事評価する立場にいたのですが、同じ成果を出している人が複数にいたら、「頑張り」が多い方を高く評価していました。正規の評価ガイドラインにはないけれど、そのように評価するように指示を受けていました。
そして、その「頑張り」は、効率性ではなく労働時間の長さでみていました。しかもその長さは、「朝早く来ている」とか「夜遅くまで残っている」とか「土日に出てる」といった勤怠記録にない労働時間をみています。
そして、長時間働いていない人は、評価が必然的に低くなる。
僕は、この評価システムが疑問に思い、何度か会社に対して改善を提案したことがあったのですが、「長時間働いている人を評価しないなんてありえない」とむしろ僕がおかしいというような扱いでした。
長時間労働が人事評価に加算されるのって、効率性を評価されるより楽なんですよね。効率性を高めるためには頭を使います。だけど、長時間労働は何も考えなくてもできますからね。とりあえず朝早くきて、夜遅くまでいて、土日出社すればよいだけですから。
僕がいた会社も、仕事の効率性なんて考えていない人が長時間働いて、割とよい評価を受けていました。一方、本当に優秀で効率性をどんどん高めることができる人は、割と評価が低くなっていました。
このように、長時間労働が評価される限りは、いくら労働時間を短くする仕組みを作っても長時間労働はなくならないでしょう。
そもそも個人の「頑張り」を人事評価に加えず、あくまで成果だけを評価するようになれば長時間労働は今よりも少なくなると思うのですが、特に家族意識の強い日本企業だと、仕事の成果のみで評価することは、なかなか難しいのかもしれませんね。